要点
ウーパールーパー(アホロートル)が浮く、体やお腹が膨れている。
ウーパールーパーの浮く症状を扱った査読文献は、当サイトが調べた範囲では、3 個体の症例報告(抄録のみ)1 本です。本文は取得できておらず、抄録の範囲でまとめています。
これらは、症例報告で報告されている次のような状態と重なることがあります。
**ただし、どちらもごく少数の症例報告です。**浮く、膨れるの原因は、 ここに挙げたものに限りません。
どんな症状か
浮力の異常(3 個体の症例報告)
家庭で飼われていたウーパールーパー(Ambystoma mexicanum)3 個体の症例報告では、 浮力の異常を示した個体について、次のことが報告されています[1]。 この論文は、著者らの知る限り、ウーパールーパーの浮力異常の病理についての 報告は、それまでに無かったと述べています。
| 項目 | 報告されている内容 |
|---|---|
| 対象 | 成体 3 個体(年齢 1・5・6 歳、体重 48・55・56 g) |
| X 線検査 | 2 個体で体腔内に遊離した空気(free air)を確認 |
| 超音波検査 | 3 個体すべてで体腔内に音響陰影を確認し、体腔内の空気(pneumocoelom)と診断 |
| 肺の所見 | 2 個体で肉眼的に肺の穿孔、3 個体すべてで肺の尾側端に線維化 |
| 経過 | 肺の病変を取り除いたところ(抄録では experimental pneumonectomy)、3 個体とも浮力の異常がなくなったと報告 |
著者らは、空気が肺から体腔内に漏れたと結論し、肺の病変がウーパールーパーの 浮力異常の重要な原因だと提案しています[1]。 この報告の抄録は、浮力の異常が具体的にどう見えたか(浮き上がる、傾くなど)や、 肺の病変が何によって生じたかを述べていません。
腹水・むくみ(細菌による敗血症の 3 個体)
メキシコの研究施設で飼育されていた成体のウーパールーパー 3 個体は、 病歴がないまま死亡して見つかり、解剖で次のことが報告されています[2]。
| 項目 | 報告されている内容 |
|---|---|
| 腹水 | 3 個体すべてで確認(軽度から中等度) |
| むくみ | 3 個体すべてで後肢に中等度のむくみ |
| 皮膚 | 2 個体で皮膚の潰瘍、1 個体でわずかな出血 |
| 内臓 | 肺の充血(軽度から重度)。個体により肝臓・脾臓・腎臓の肉眼的な異常。組織検査で肺炎・肝炎・胃炎・腸炎・糸球体腎炎 |
| 細菌の検出 | 腹水・肺・えらから Aeromonas veronii、Citrobacter freundii、Citrobacter portucalensis などを検出 |
著者らは、微生物学的・肉眼的・組織学的所見から、3 個体の死因を敗血症としています[2]。 この報告で記されているのは解剖の所見であり、生きている間に浮力の異常があったかどうかは 述べられていません。
体腔内の液体は、少量なら正常な場合もある
健康と判断された 28 個体のウーパールーパーの超音波検査では、体腔内に少量の液体が 全個体で見られたと報告されています。同論文はこれを、両生類でよくみられる 生理的な所見で、腹水(hydrocoelom)とは区別されるとし、多量の液体が体腔を満たして 肝臓や消化管が液体の中に浮くようになった場合を異常とみなす、と述べています (この基準は同論文が引用する教科書の記述です)[3]。
考えられる原因
文献では、次のことが報告されています。
- 肺の病変(穿孔や尾側端の線維化)を伴って、空気が体腔内に漏れていたウーパールーパーが 3 個体報告されている[1]
- 細菌による敗血症で死亡したウーパールーパー 3 個体で、腹水とむくみが確認されている (検出された細菌は Aeromonas veronii、Citrobacter freundii、Citrobacter portucalensis)[2]
- 気体が水に過剰に溶け込んだ状態(気体過飽和)に関連する気泡病が、野生の Anji salamander(Hynobius amjiensis)の幼生 4 個体で報告されている。皮下と腹部の気体、 浮力の異常、食欲不振がみられ、重症の個体では腹腔内の大きな気泡で胴体が部分的に 膨れた。発生した水たまりは富栄養化と藻の大量発生が著しく、気体の過飽和は主に 溶存酸素によるものだったとされる[4]
敗血症の報告の序論は、飼育下の両生類の細菌感染は、過密な飼育条件や水質の悪さが 引き起こす生理的ストレスによるとされてきたと述べています。ただしこれは序論の 記述で、この研究の 3 個体で確かめられたことではありません[2]。
いずれも、飼い方のどこか一つが原因と断定できるものではありません。 個々の個体で何が原因かを、当サイトが特定することはできません。 診断は必ず獣医師の判断によります。
家庭でできること
診断や治療は家庭でできることではなく、必ず獣医師の判断が要ります。
そのうえで、一般的な健康管理として次のことが助けになる可能性があると 考えられています。
- 水質・水温を、飼育している種にとって適切とされる範囲に保つ
- 普段の浮き方・お腹の大きさ・食欲を記録しておき、変化に早く気づけるようにする
- 受診するときは、いつから、どのように浮くか(または膨れるか)、食べているかを 獣医師に伝えられるようにしておく
浮いている個体のお腹を押したり、体内の空気や液体を抜こうとしたりしないでください。 報告されている体腔内の空気や腹水は、画像検査や解剖で確認されたものです。
受診の目安
今日中に受診を検討してください
- 水面に浮いたまま、潜れない・姿勢を保てない
- お腹や体が目に見えて膨れている、後肢などにむくみがある
- 皮膚に潰瘍や出血がある
- 食べず、ぐったりして動かない
数日のうちに受診を検討してください
- 浮きやすさやお腹の膨らみが、軽くても何日も続いている
- 食欲が無い状態が数日以上続いている
敗血症の報告では、3 個体とも死亡して見つかるまで病歴がなかったとされています[2]。 外見の変化が軽く見えても、様子見を長引かせないことを検討してください。