要点
いきんでも卵が出てこない、お腹(体腔)が膨らんだまま元気や食欲が落ちている、といった様子は、爬虫類のディストシア(卵詰まり・卵塞)で報告されている症状と重なります[1]。
文献では、殻のできた卵が卵管内に留まる「排卵後のディストシア」と、卵胞が排卵されないまま体内に留まる「卵胞停滞」という、性質の異なる2つの病態が報告されています[3]。
いずれも自然に改善することを期待せず、早めの受診が勧められます。
どんな症状か
爬虫類のディストシアでは、次のような、はっきりしない全身症状が報告されています[1]。
- 食欲不振
- 元気の低下
- お腹(体腔)の膨らみ
- 落ち着きのなさ
- いきむようなしぐさ
- 総排泄腔からの脱出
これらの症状は数週間から数か月続くこともあり、早期に見つけにくいと報告されています[1]。
米国で飼育されているイースタン・インディゴスネークの繁殖コロニーを対象にした後方視的調査では、2010〜2020年の104回の繁殖のうち34回(32.7%)でディストシアが発生したと報告されています[2]。同じ調査では、初めての繁殖(未経産)の個体はそれ以降の繁殖に比べて9.28倍、体重1.5kg未満の個体は4.43倍、ディストシアを発症しやすかったとも報告されています。年齢による発症のしやすさの差は統計的に見られませんでした[2]。
これは特定のヘビ種の飼育下コロニーで得られた数字で、すべてのヘビ・トカゲに同じ割合が当てはまるとは限りません。それでも、体が軽い個体・初めて産卵する個体は注意が必要と考えられる根拠になります。
考えられる原因
文献では、次のような要因が仮説として挙げられています[1]。
- 温度や湿度が適切でない環境
- 産卵に適した場所(産卵床)が用意されていないこと
- 食餌のカルシウムやビタミンD3の不足
- ホルモンの働きの乱れ(卵管の収縮に関わるホルモンの受容体の異常など)
- 体腔内の腫瘤・感染・結石など、卵の通り道をふさぐもの
体内でカルシウム・ビタミンD3が不足した状態(代謝性骨疾患)は、飼育下のトカゲで広く見られると総説で述べられており、産卵にも影響しうる要因の一つとして挙げられています[1]。
また、卵が卵管内に留まる「排卵後のディストシア」とは別に、卵胞が排卵されないまま体内に留まる「卵胞停滞」という状態も報告されています[3]。この状態は必ずしも病的とは限らず、環境や社会的な条件への生理的な反応として、時間をかけて自然に吸収されていく過程であることもあると報告されています[3]。一方で、同じ報告は、吸収されずに残った卵胞が体腔の炎症や代謝の異常、周囲の臓器への物理的な影響を引き起こすこともあると明記しています[3]。どちらの状態であるかは、レントゲンや超音波などによる獣医師の判断が必要です。
家庭でできること
診断や治療は家庭でできることではなく、必ず獣医師の判断が要ります。
そのうえで、一般的な健康管理として、次のことが助けになる可能性があると考えられています[1]。
- 適切な温度・湿度の環境を用意する
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これらはあくまで一般的な健康管理であり、すでに卵が留まっている個体を治すものではありません。
いきんでいる個体のお腹を圧迫したり、家庭で卵を取り出そうとしたりしないでください。
受診の目安
今日中に受診を検討してください
- いきんでも卵が出てこない状態が続いている
- 総排泄腔から組織が脱出したままになっている
- お腹(体腔)が普段と違う張り方をしている
数日のうちに受診を検討してください
- 食欲が無い状態が数日以上続いている
- 元気が無い、動きが鈍いといった様子が普段と違うと感じる
- 産卵の予定時期を過ぎても産卵の様子が見られない
初めての産卵をひかえた個体や体格の小さい個体は、特に注意して様子を見ることが勧められます[2]。