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ヘビが食べたものを吐き戻す・吐き戻しを繰り返す

ヘビが食べたものを吐き戻す、吐き戻しを繰り返すときは、文献で胃や消化管の感染症、 神経症状を伴うウイルス病、腫瘍などの症状として報告されている状態と重なります。 調査や症例報告をもとに、報告されている様子・病気の例・受診の目安をまとめました。

文献 5 本更新

診断や治療を提供するものではありません。

ここに書いてあるのは、文献に報告されている内容の要約です。 実際の診断・治療は、必ず動物病院で受けてください。

要点

ヘビが食べたものを吐き戻す。一度きりでなく、繰り返している。

文献では、吐き戻しは単独の病名ではなく、複数の病気の症状の一つとして報告されています。 当サイトで本文または抄録を確認できたのは次のとおりです。

**どれに当たるかは、当サイトでは判断できません。**繰り返し吐き戻しているときは、早めの受診が勧められます。

ヘビが食べたものを吐き戻すイメージ図
イメージ図。実際の個体の見え方には個体差があります。口から食べたものが戻っている様子を示しています。

どんな症状か

報告されている吐き戻しの様子

これらは別々の集団・個体の報告で、どの病気が多いかを比べることはできません。

考えられる原因

「考えられる原因」の節に挙げるのは、文献で吐き戻しが症状として挙げられた病気の例です。 原因を網羅したものではありません。

クリプトスポリジウム(胃や腸の感染)

中国の 26 の省で集めた飼育下のヘビの糞便を調べた報告です(コーンスネーク、ブラックラットスネーク、パインスネーク、ガーターヘビ、キングスネーク、ホッグノーズスネークの 6 種)[1]。

著者らは、C. serpentis と C. varanii がそれぞれ吐き戻しと下痢の「原因の可能性が高い」と述べています[1]。 ただしこれは糞便の遺伝子検査と症状の統計的な関連で、個々のヘビの吐き戻しの原因を確かめたものではありません。 吐き戻しがあった 59 匹のうち 11 匹では検出されていません[1]。

ブラジルの研究所で C. serpentis に自然感染していた 21 匹の報告は、この感染症を「慢性の臨床型または無症状の感染で、肥厚性胃炎、吐き戻し、進行性の体重減少、死亡、糞便への原虫の間欠的または持続的な排出を特徴とする」と説明しています[2]。 21 匹すべてが原虫を間欠的に糞便に出しており、糞便検査の陽性は 184 検体中 157 検体(85.32%)でした[2]。

クラミドフィラが関わった集団発生

米国フロリダ州の飼育施設で、野生捕獲のエメラルドツリーボア 105 匹を、もとからいた 15 匹の群に 4 か月かけて加えたところ、その後の 23 か月に、計 120 匹のうち 81 匹(67%)が吐き戻しを繰り返し、そのうち 61 匹(75%)が死亡したと報告されています[3]。 消化管の組織には、肉芽腫をともなう炎症があり、クラミジアの抗原が染色で確認され、電子顕微鏡でクラミドフィラに似た生物が見られました[3]。

これは輸入直後の野生捕獲個体の 1 施設での集団発生で、一般の飼育下のヘビの頻度や致死率を示すものではありません。

神経症状を伴うウイルス病(封入体病)

パイソンに自然感染したレプタレナウイルスは、吐き戻し、「スターゲイジング」と呼ばれる宙を見つめるような姿勢、頭の震え、方向感覚の喪失、コルク抜きのようにねじれる動き(コークスクリューイング)といった症状として現れると述べられています[4]。原文は、吐き戻しを中枢神経系の症状の例に含めています[4]。

同じ報告は、近年の飼育下のボアの感染は目立った症状の無いことが多いとも述べています[4]。 くわしくは、当サイトの別記事「ボア・パイソンが痙攣する・体をひねる(封入体病)」にまとめています。

胃の腫瘍

5 歳の飼育下のダイヤモンドパイソン 1 例で、1 か月間の吐き戻しと食欲不振、体腔のふくらみがあり、胃壁の大部分に及び胃の内腔をふさぐ腫瘤が確認されて、病理検査で胃の腺がん(胃腺癌)と診断されたと報告されています[5]。 この報告は、胃の内視鏡で採った組織の検査では異常が出なかったことを挙げ、胃の腫瘤の構造によっては組織検査が陰性になりうると述べています[5]。

1 例の報告で、ヘビの吐き戻しに腫瘍がどのくらい関わるかは分かりません。

家庭でできること

診断や治療は家庭でできることではなく、必ず獣医師の判断が要ります。

そのうえで、受診のときに伝えられるよう、次のことを控えておくと役立ちます。

  • 吐き戻した日時と、そのヘビに最後に餌を与えた日時
  • 吐き戻しの回数と、いつごろから続いているか
  • 食欲、体重、便の様子(下痢の有無など)の変化
  • お腹のふくらみの有無
  • 頭の震え、体をひねる動きなど、ふだんと違う動き
  • 最近新しく迎えた個体がいるか、同じ場所で飼っているほかの個体にも似た様子があるか
  • 吐き戻したものや、お腹まわりの写真・動画

吐き戻したものや糞便を病院に持っていくかどうかは、受診前に電話で確かめてください。

受診の目安

今日中に受診を検討してください

  • 吐き戻しが繰り返し続いている(繰り返す吐き戻しを示したエメラルドツリーボアの集団発生では、吐き戻しを繰り返した 81 匹のうち 61 匹(75%)が死亡したと報告されています[3]。輸入直後の野生捕獲個体の 1 施設の数字で、一般の飼育下の個体に当てはまるとは限りません)
  • 吐き戻しに加えて、頭の震え、体をひねる、方向感覚を失ったような様子がある(パイソンの封入体病で報告されている症状です[4])
  • 吐き戻しに加えて、お腹が目に見えてふくらんでいる(胃の腫瘍の 1 例でお腹のふくらみが報告されています[5]。また、中国の調査では、胃のふくらみのあとに突然死した例を飼い主が述べたと書かれています[1])
  • 吐き戻しがあり、ぐったりして反応が鈍い

数日のうちに受診を検討してください

  • 吐き戻しが 1 回きりでも、食欲不振や体重の減りが続いている(C. serpentis の感染で、吐き戻し・食欲不振・進行性の体重減少が報告されています[2])
  • 同じ場所で飼っているほかの個体にも、吐き戻しや食欲不振がある

吐き戻しが 1 回だけで、ほかに変わった様子がない場合の扱いを述べた文献は、当サイトでは確認できていません。 迷うときは、獣医師に電話で相談してください。

あわせて読む

よくある質問

ヘビの吐き戻しは、何の病気のサインですか

吐き戻しは単独の病名ではなく、文献では複数の病気の症状の一つとして挙げられています。 当サイトで確認できたのは、胃や腸にいる寄生性の原虫(クリプトスポリジウム)の感染[1][2]、 クラミドフィラという細菌が関わった集団発生[3]、 パイソンの神経症状を伴うウイルス病[4]、胃の腫瘍の 1 例[5]です。 **どれに当たるかは、獣医師の診察と検査で調べることで、 写真や文章から当サイトが判断することではありません。**

クリプトスポリジウムがいると、吐き戻すのですか

中国で、消化器の症状があったヘビ 147 匹の糞便を調べた報告では、 「食後の吐き戻し」があった 59 匹のうち 48 匹でクリプトスポリジウムが検出され、 そのうち 39 匹が C. serpentis、9 匹が C. varanii でした[1]。 C. serpentis は吐き戻しがあった群に多く、C. varanii は下痢があった群に多かったと報告されています[1]。 ただし吐き戻しがあった 59 匹のうち 11 匹では検出されておらず[1]、 糞便からの検出は、その個体の症状の原因が確定したことを意味しません。

食べてからどのくらいで吐き戻したら、病気の疑いがありますか

この問いに答えられる文献は、当サイトでは確認できていません。 エメラルドツリーボアの集団発生の報告では、吐き戻しは餌を食べた 3〜4 日後に起きたと書かれています[3]。 これはその集団での記述で、ほかのヘビや、ほかの病気に当てはめられるものではありません。

飼育温度や触りすぎ、餌の大きさが原因になることはありますか

当サイトが確認した文献は、感染症と腫瘍の報告で、 飼育温度・扱い方・餌の大きさと吐き戻しの関係を述べたものは確認できていません。 「確認できていない」ことは「関係がない」ことを意味しません。 吐き戻しが続くときは、原因を自分で決めず、獣医師に相談してください。

ほかのヘビにうつることはありますか

病気によって異なります。クリプトスポリジウムについて、中国の調査は、 糞便を介して口から広がること、症状の無い感染個体も糞便に原虫を出す可能性があることを述べています[1]。 ブラジルの研究所で C. serpentis に自然感染していた 21 匹では、 全個体が原虫を間欠的に糞便に出していたと報告されています[2]。 エメラルドツリーボアの報告は、輸入された野生捕獲個体 105 匹を飼育群に加えたあとに 多数の個体で吐き戻しが起きた集団発生で、個体間でうつったかどうかは抄録に書かれていません[3]。

根拠にした文献

  1. Zhang Y, Lu Z, He L, Xiao G, Tian L, Zhu J, Liu T, Ou Q, Chen H, Hwong Y, Kang Y, Xu Q, Zhang Q, Yang C. (2024). Cryptosporidium spp. in captive snakes from 26 provinces in China: Prevalence, molecular characterization, and symptoms. Parasite, 31: 47。DOI: 10.1051/parasite/2024047CC BY
  2. Paiva PR, Grego KF, Lima VM, Nakamura AA, da Silva DT, Meireles MV. (2013). Clinical, serological, and parasitological analysis of snakes naturally infected with Cryptosporidium serpentis. Veterinary Parasitology, 198(1-2): 54-61。DOI: 10.1016/j.vetpar.2013.08.016抄録のみ 抄録による記述です。
  3. Lock B, Heard D, Detrisac C, Jacobson E. (2003). An epizootic of chronic regurgitation associated with chlamydophilosis in recently imported emerald tree boas (Corallus caninus). Journal of Zoo and Wildlife Medicine, 34(4): 385-393。DOI: 10.1638/02-065抄録のみ 抄録による記述です。
  4. Alfaro-Alarcón A, Hetzel U, Smura T, Baggio F, Morales JA, Kipar A, Hepojoki J. (2022). Boid Inclusion Body Disease Is Also a Disease of Wild Boa Constrictors. Microbiology Spectrum, 10(5): e01705-22。DOI: 10.1128/spectrum.01705-22CC BY
  5. Baron H, Allavena R, Melville L, Doneley R. (2014). Gastric adenocarcinoma in a diamond python (Morelia spilota spilota). Australian Veterinary Journal, 92(10): 405-409。DOI: 10.1111/avj.12233抄録のみ 抄録による記述です。

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