要点
体表に盛り上がったしこりができる、食欲や元気が落ちるといった様子は、フトアゴヒゲトカゲで報告されている腫瘍性の病気の経過と重なることがあります[1][3]。
海外の病理検査機関に提出された記録では、体表のしこり(クロマトフォローマという腫瘍)が標本の約 2% で見つかったと報告されています[1]。腫瘍は体表だけでなく、消化管や体内にできることもあると報告されています[2][3]。
どんな症状か
海外で報告されている、フトアゴヒゲトカゲの腫瘍に関するデータは、次のとおりです。
| 報告されている腫瘍・所見 | 件数・割合 |
|---|---|
| 体表の色素性のしこり(クロマトフォローマ)※病理検査機関への提出 851 例中 | 17 例(2%)[1] |
| 消化管にできた腫瘍(胃・口腔・腸・食道・総排泄腔)の内訳(51 例) | 胃 26 例、口腔 18 例、腸 13 例、食道 3 例、総排泄腔 2 例[2] |
| 皮膚にできた小さな結節(角化棘細胞腫)が切除後に再発した例 | 症例 1 例(1 年後に同じ場所へ再発)[4] |
| 体内の腫瘤に先立つ食欲不振・元気消失(約 2 週間持続) | 症例 1 例[3] |
体表のしこりに関する報告では、年齢は生後 9 か月〜11 歳、性別による偏りは見られなかったとされています[1]。単発で、盛り上がった色のついたしこりや、色の変わった鱗が胴体にできることが多く、四肢や頭部にできることは比較的少ないと報告されています[1]。同じ報告では、経過を追えた 6 例で再発や腫瘍による死亡は確認されず、外科的な切除で予後が良いことが多いともされています[1]。
消化管にできる腫瘍のうち、胃・食道・腸にできたものは、いずれも死亡または安楽死に至ったと報告されています。これに対し、口腔にできたもの(肉腫・腺腫性ポリープなど)の多くは死亡に至らず、経過は良好だったと報告されています[2]。
体内に腫瘤ができた症例報告では、約 2 週間続く食欲不振・元気消失に続いて、触診で 2×1 cm ほどのしこりが見つかり、一時的に総排泄腔が脱出した状態も見られたとされています[3]。この個体は手術で腫瘍を摘出したのち、数週間かけて食欲・元気が戻ったと報告されています[3]。
考えられる原因
腫瘍ができる原因は、今回参照した文献でも十分には分かっていません。
- 体表のクロマトフォローマや、消化管にできる腫瘍については、原因を特定した記述は今回参照した文献にはありません[1][2]。
- 皮膚にできる角化棘細胞腫(扁平上皮癌に近い腫瘍とされる)の症例報告では、症例個体を含め紫外線(UV-B)灯と個体との距離が推奨範囲より近すぎたことが確認されており、著者は人工的な紫外線が腫瘍の発生に関与している可能性を指摘しています[4]。ただしこの報告はフトアゴヒゲトカゲ 1 例を含む 5 例の観察にとどまり、因果関係を証明したものではありません。
原因がはっきりしないことは、飼い主の管理が悪かったことを意味しません。
家庭でできること
診断や治療は家庭でできることではなく、必ず獣医師の判断が要ります。
そのうえで、一般的な健康管理として次のことが助けになる可能性があると考えられます。
- 体を触ったときの、しこりや盛り上がり・色の変化の有無を、日頃から確認する
- 食欲・排泄・活動量の変化に早めに気づけるよう、ふだんの状態を把握しておく
- 紫外線灯は、メーカーが示す設置距離・照射量の範囲に収まっているかを確認する
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しこりに気づいても、家庭で切開したり、無理に押しつぶしたりしないでください。
受診の目安
今日中に受診を検討してください
- 体にできたしこりから出血している、または潰瘍になっている
- 総排泄腔や体の一部が、普段と違う形で外に出たままになっている
- ぐったりして反応が鈍い、または急に食べなくなった
数日のうちに受診を検討してください
- 体表に、これまで無かった盛り上がったしこりや、色の違う部分ができた
- 食欲が無い状態、元気が無い状態が数日以上続いている
- お腹が張っている、触ると硬いしこりのようなものがある
しこりが小さく、痛みや出血が無いように見えても、良性か悪性かは見た目だけでは分かりません。大きさや形の変化を待たずに相談することが勧められます。