要点
元気がない、動きの様子が普段と違う、といった様子は、オーストラリアの動物病院を受診したフトアゴヒゲトカゲ 724 匹の調査で報告されている傾向と重なります[1]。
骨・関節・筋肉を含む運動器の異常は、この調査で報告された病気の中でも比較的多い区分として位置づけられています[1]。
原因としては、紫外線(UVB)不足や食餌からのカルシウム・ビタミンD3の不足によるカルシウム代謝の乱れが、複数の研究で報告されています[2][3][4]。
どんな症状か
オーストラリア国内 3 施設で、フトアゴヒゲトカゲ 724 匹・延べ 1000 回の受診記録を調べた調査で報告されている内容は、次のとおりです[1]。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 受診理由で最も多かったもの | 元気が無い(181 件) |
| 最も多く影響を受けていた臓器・器官系 | 消化管(18.25%)・皮膚(18.25%)に次いで運動器(15.17%) |
| 単一の病気として多く報告されたもの | 消化管内寄生虫(103 件)、代謝性骨疾患(65 件)、皮膚の傷(59 件)、歯周病(48 件) |
| 予防的な健診で来院した個体(159 件)のうち、何らかの処置を受けた割合 | 45.30% |
この調査では、フトアゴヒゲトカゲに見られる病気の多くが飼育環境(ハズバンダリー)の不備と結びつくものであり、防ぎやすい可能性があると報告されています[1]。
代謝性骨疾患そのものは、ビタミンDの不足に起因する一連の健康問題の総称として使われています[2]。具体的にどのような見た目・動きの変化として現れるかは個体や重症度によって差があり、今回参照した調査の範囲では詳しい内訳までは分かりません。
考えられる原因
ビタミンD の不足は、代謝性骨疾患と総称される一連の健康問題につながると報告されています[2]。フトアゴヒゲトカゲは、飼育管理が適切でない場合に代謝性骨疾患を起こしやすい種として報告されています[2]。
報告されている仕組み・関連要因には、次のようなものがあります。
- ビタミンD3 の不足がカルシウム代謝の異常につながり、栄養性続発性上皮小体機能亢進症を起こすと報告されている[3]
- フトアゴヒゲトカゲを含む昼行性のトカゲ全般は、食餌でビタミンD3 を与えていても紫外線(UVB)に当たれないとビタミンD欠乏になりやすいと報告されている[4]
- UVB を出す照明の種類(蛍光灯・LED など)によって、血液中のビタミンD3 代謝物の濃度に違いが出ると報告されている[3]
- 一方、夜行性のヒョウモントカゲモドキの幼体では、食餌からのビタミンD3 補給だけで、生後 6 か月間の成長・体重には紫外線の有無による目立った違いが見られなかったとも報告されている[4]
種によって紫外線への依存度が異なる可能性があるという段階の知見であり、どの種であっても紫外線が不要と言い切れるものではありません。
家庭でできること
診断や治療は家庭でできることではなく、必ず獣医師の判断が要ります。
そのうえで、一般的な健康管理として次のことが助けになる可能性があると考えられています。
- 種に応じた紫外線(UVB)照明を用意する[3][4]
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- カルシウムを含む適切な食餌を用意する
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成体の雌フトアゴヒゲトカゲでは、紫外線を6か月以上当てたあとであれば、その後83日間紫外線が途絶えても、体内に蓄えたビタミンDである程度維持できたと報告されていますが[2]、これは紫外線を用意しなくてよいという意味ではありません。
これらはあくまで一般的な健康管理であり、すでに代謝性骨疾患を起こしている個体を治すものではありません。
受診の目安
今日中に受診を検討してください
- 立ち上がれない、体を支えられないなど、普段できていた動きが急にできなくなった
- 元気の無さが急に強くなった、あるいは呼びかけへの反応が乏しい
数日のうちに受診を検討してください
- 元気が無い状態が数日以上続いている(オーストラリアの調査で最も多い受診理由として報告されている[1])
- 歩き方や姿勢など、運動に関わる普段と違う様子が続いている
症状が無くても、健康診断のタイミングで相談することも意味があります。予防的な健診で来院した個体のうち、4 割以上が何らかの処置を受けたと報告されています[1]。紫外線(UVB)照明を長期間交換していない、飼育環境を見直したい点がある、といった場合も、健診の機会に相談するとよいでしょう。