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カメ・リクガメの総排泄腔(お尻)から何かが出たままになっている(脱出)

カメ・リクガメの総排泄腔(排泄口)から、陰茎や卵管、総排泄腔そのものが 出たままになっているときは、文献で「脱出」として報告されている状態と重なります。 症例集計や総説をもとに、報告されている種類・症状・原因・受診の目安をまとめました。 ヘビについては、確認できた範囲も書いています。

文献 4 本更新

診断や治療を提供するものではありません。

ここに書いてあるのは、文献に報告されている内容の要約です。 実際の診断・治療は、必ず動物病院で受けてください。

要点

カメ・リクガメの総排泄腔(排泄口)から、普段は見えない組織が出たままになっている。

これは、文献で「脱出(プロラプス)」として報告されている状態と重なります[1][2]。

オスでは陰茎、メスでは卵管、そして総排泄腔そのものが外に出る例が報告されています[1][2]。

陰茎・半陰茎の脱出が慢性になった例では、組織の壊死や潰瘍が見られたと報告されており[1]、 メスの総説は卵管・総排泄腔の脱出を「産科的な緊急事態」と位置づけています[2]。

出ているものが何かは、当サイトでは判断できません。早めの受診が勧められます。

カメの総排泄腔(お尻)のまわりのイメージ図
イメージ図。実際の個体の見え方には個体差があります。総排泄腔(お尻)のまわりを示しています。

どんな症状か

報告されている脱出の種類

イタリア北部の専門の紹介診療施設で、2020〜2023 年に生殖器に関わる病気と診断された 47 例の内訳のうち、脱出に関わる 2 つの診断です[1]。

診断 件数 割合
陰茎・半陰茎(hemipenes)の脱出 15 例 31.9%
卵管の脱出 4 例 8.5%

陰茎・半陰茎の脱出 15 例は、カメ目が 11 例、有鱗目(トカゲ・ヘビなど)が 4 例でした[1]。

卵管の脱出 4 例は、すべてカメ目で、すべてヘルマンリクガメでした[1]。 著者らは、これは種に特有の傾向ではなく、イタリアの飼育下でこの種が多いことを反映している可能性が高いと述べています[1]。

これは紹介診療施設に来院した個体の集計で、飼育下のカメ全体での頻度ではありません。

陰茎・半陰茎の脱出は、「交尾器が総排泄腔から出たままになる状態」と説明され、 主に性成熟したオスで報告されています[1]。 この集計でも、年齢が分かった個体はすべて 3 歳以上でした[1]。

メスのカメ・リクガメの総説は、卵管が総排泄腔から出る場合と、総排泄腔そのものが外に出る場合があると説明しています[2]。

見た目のほかに報告されている症状

陰茎・半陰茎の脱出の集計では、ほかの症状は一般に特異的でなく、脱出そのものが診察で明らかだったと述べられています[1]。 慢性の例では、組織の壊死、潰瘍、ハエ幼虫症がしばしば見られました[1]。

メスの総説では、卵管・総排泄腔の脱出は、症状が見られないものから重度の脱水や敗血症に至るものまであると述べられています[2]。

どのくらい見つかるか

英国の一般診療(VetCompass)の記録から、2019 年に無作為に選んだカメ類 2,040 頭を調べた報告です[3]。

著者らは、記録の期間が短く、検査が限られることが多いため、記録された病名の精度に限界があると述べています[3]。

考えられる原因

オスの陰茎・半陰茎の脱出

イタリアの集計は、これまでの研究で挙げられている要因として、外傷、交尾に伴う損傷、感染、消化管や総排泄腔の閉塞、代謝性疾患、神経疾患を挙げています[1]。

この集計の症例では、外傷、感染、代謝性疾患、総排泄腔の閉塞が関連する状態として多く、神経疾患に関連した例はありませんでした[1]。

メスの卵管・総排泄腔の脱出

メスのカメ・リクガメの総説は、原因として次のものを挙げています[2]。

また、脱出はしばしば難産のとき、または卵を一部産んだところで起こると述べられています[2]。

イタリアの集計も、卵管の脱出は難産やほかの生殖器の病気(卵管炎、卵胞の停滞、卵管破裂、腫瘍など)に伴ってしばしば報告されており、医療行為に伴う要因が関わる可能性もあると述べています[1]。 ただし、この集計の 4 例では、はっきりした原因は特定できませんでした[1]。

いずれも、個々の飼育環境や個体で何が原因かを、当サイトが特定することはできません。 診断は必ず獣医師の判断によります。

ヘビの場合

ヘビについては、症状や原因を個別に整理した報告を、当サイトでは本文を確認できていません。

確認できたのは、英国の獣医学校で 1999〜2013 年に診察された爬虫類 3,019 頭のうち、56 頭(1.9%)に総排泄腔脱があったという報告です[4]。 ヘビと比べて、カメ類とトカゲ類では 3.47 倍、脱出が見られやすかったとされています[4]。

この報告は爬虫類をまとめた集計で、抄録のみを確認しています。 ヘビについて分かるのは、同じイタリアの論文が、先行文献を引いて、卵管の脱出は主にヘビとカメ類で報告されていると述べていること[1]までです。 同じ集計に有鱗目(トカゲ・ヘビ)の半陰茎の脱出が 4 例ありますが、ヘビとトカゲの内訳は示されていません[1]。

家庭でできること

診断や治療は家庭でできることではなく、必ず獣医師の判断が要ります。

そのうえで、受診のときに伝えられるよう、次のことを控えておくと役立ちます。

  • 出ているのに気づいた日時と、その後の見た目の変化
  • 産卵の時期のメスかどうか、卵を産みかけていた様子があったか
  • 食欲や元気など、ほかにいつもと違う様子
  • 出ている部分の写真

受診の目安

今日中に受診を検討してください

  • 総排泄腔から組織が出たままになっている(メスの総説は、卵管・総排泄腔の脱出を「産科的な緊急事態」としています[2]。オスの陰茎の脱出の緊急性を述べた出典は確認できていません)
  • メスで、卵を産みかけていた様子のあとに組織が出ている(脱出は難産や産卵の途中で起こることが多いと述べられています[2])
  • 出ている組織に、ただれや、組織が傷んで見える変化、ウジがわいている様子がある(慢性例で壊死・潰瘍・ハエ幼虫症が報告されています[1])
  • 組織が出ているうえに、ぐったりして反応が鈍い

数日のうちに受診を検討してください

  • 総排泄腔のまわりが腫れている、赤いなど、いつもと違って見えるが、組織が出ているのかどうかははっきりしない(組織が出ているなら、上の「今日中」に当たります)

卵管・総排泄腔の脱出には、症状が目立たないものから、重度の脱水や敗血症に至るものまであると述べられています[2]。

よくある質問

リクガメのお尻から何か出ているのは、何が出ているのですか

文献では、オスでは陰茎(交尾器)の脱出[1]、メスでは卵管の脱出[1][2]、 そして総排泄腔そのものが外に出る脱出[2]が報告されています。 メスのカメ・リクガメの総説は、出ているものの形と触診が手がかりになり、 卵管・直腸・膀胱・総排泄腔の脱出が鑑別の対象になると述べています[2]。 **何が出ているかは、獣医師の診察で区別されることで、 写真や文章から当サイトが判断することではありません。**

オスのカメの陰茎が出たままなのは、よくあることですか

イタリア北部の専門の紹介診療施設で 2020〜2023 年に生殖器の病気と 診断された 47 例のうち、15 例(31.9%)が陰茎または半陰茎の脱出で、 診断のなかで最多でした[1]。15 例のうち 11 例がカメ目、4 例が有鱗目です[1]。 ただしこれは、紹介診療施設に来院した個体の集計であり、 飼育下のカメ全体での頻度を示すものではありません。

放っておくとどうなりますか

陰茎または半陰茎の脱出の症例集計では、慢性になった例で 組織の壊死、潰瘍、ハエ幼虫症(ウジがわくこと)がしばしば見られたと 述べられています[1]。メスの総説は、卵管・総排泄腔の脱出では 症状が目立たないものから、重度の脱水や敗血症に至るものまであると述べ、 脱出を「産科的な緊急事態」としています[2]。

どのくらいの割合で起こりますか

英国の一般診療での 2019 年の記録から無作為に選んだカメ類 2,040 頭では、 総排泄腔脱が記録されていたのは 23 頭(1.13%)でした[3]。 内訳はリクガメ 1,923 頭中 21 頭(1.09%)、テラピン 74 頭中 2 頭(2.70%)、 turtle と記録された 43 頭中 0 頭です[3]。著者らは、記録の期間が短く、 検査が限られることが多いため、記録された病名の精度に限界があると述べています[3]。

ヘビのお尻から何か出ている場合はどうですか

ヘビの症状や原因を個別に整理した報告は、当サイトでは本文を確認できていません。 確認できたのは、英国の獣医学校で 1999〜2013 年に診察された爬虫類 3,019 頭のうち 56 頭(1.9%)に総排泄腔脱があり、ヘビと比べてカメ類とトカゲ類では 3.47 倍、脱出が見られやすかったという報告です[4]。 これは爬虫類をまとめた集計で、抄録のみを確認しています。 ヘビについて分かるのは、同じイタリアの論文が、先行文献を引いて、卵管の脱出は主にヘビとカメ類で報告されていると述べていること[1]までです。 同じ集計に有鱗目(トカゲ・ヘビ)の半陰茎の脱出が 4 例ありますが、ヘビとトカゲの内訳は示されていません[1]。

根拠にした文献

  1. Vetere A, Gavezzoli M, Ablondi M, Nardini G, Di Ianni F. (2026). Reproductive Disorders in Pet Reptiles Presented to a Specialized Exotic Animal Referral Center in Northern Italy (2020-2023). Animals (Basel), 16(18): 2930。DOI: 10.3390/ani16182930CC BY
  2. Lubian E, Palotti G, Di Ianni F, Vetere A. (2025). Disorders of the Female Reproductive Tract in Chelonians: A Review. Animals (Basel), 15(9): 1275。DOI: 10.3390/ani15091275CC BY
  3. Hornby JM, Hedley J, Brodbelt DC, Church DB, O'Neill DG. (2025). Demography, commonly recorded disorders and mortality in chelonia under UK primary veterinary care: A VetCompass study. PLoS One, 20(4): e0321038。DOI: 10.1371/journal.pone.0321038CC BY
  4. Hedley J, Eatwell K. (2014). Cloacal prolapses in reptiles: a retrospective study of 56 cases. Journal of Small Animal Practice, 55(5): 265-268。DOI: 10.1111/jsap.12199抄録のみ 抄録による記述です。

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