要点
リクガメの甲羅の1枚1枚(鱗板)がドーム状・ピラミッド状に盛り上がっている、 甲羅が柔らかい気がする。
CTを使った調査では、甲羅の柔らかさの重症度が上がるにつれて骨密度が 段階的に低下したと報告されています[1]。一方で、健康と 判定された個体にも軽度〜中等度の盛り上がりを示す個体が多く含まれており、 甲羅全体の縦横比(扁平化の指標)でも健康な個体と代謝性骨疾患のある個体の あいだで統計的な差が無かったとも報告されており[1]、見た目 だけで重症度を判断することはできません。
どんな症状か
なめらかな甲羅
ピラミッド状に盛り上がった甲羅
ドイツの大学附属病院で、ヘルマンリクガメ23頭(臨床的に健康な12頭・ 代謝性骨疾患(MBD)のある11頭)を対象にした調査では、次のことが 報告されています[1]。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 対象 | 健康12頭、MBD11頭(軽度4・中等度3・重度4、触診による甲羅の柔らかさで分類) |
| 骨密度(CT測定) | 柔らかさの重症度が上がるほど、喉甲板・肩甲骨・腸骨のすべての部位で段階的に低下 |
| 最も低下が大きい部位 | 喉甲板(プラストロン前方) |
| 甲羅の縦横比(甲羅全体の扁平化の指標) | 群のあいだで統計的な差は無し(肩帯の比だけ軽度の傾向) |
| 健康群での盛り上がり | 12頭中11頭に、軽度〜中等度の盛り上がりがみられた |
この調査は、「甲羅の触診による柔らかさ」は骨密度とある程度対応するが、 「見た目の盛り上がりの有無・程度」だけでは重症度を判断できないことを 示しています[1]。論文は、触診による評価が難しい境界的な例では、 画像検査を併用することが望ましいと述べています[1]。
考えられる原因
調査で報告されている要因には、次のようなものがあります。
- カルシウム・リン・ビタミンD3のバランス:代謝性骨疾患は、食事の カルシウム不足・カルシウムとリンの比率の乱れ・ビタミンD3不足などが 複合的に関わるとされています[1]
- サプリメントの配合バランス:ヘルマンリクガメの幼体を対象にした実験で、 ビタミンD3がカルシウムに対して相対的に少ない配合のサプリメントを 与えられた群は、体重の増加は大きかったものの、甲羅が弱くなった (中等度の代謝性骨疾患)と報告されています。この実験は12頭・1施設に よるもので、一般化には注意が必要です[3]
- 急速な成長:アカアシガメの幼体を対象にした実験では、消化の良い (高デンプンの)餌を与えられた個体は甲羅の幅の成長が早く、骨のミネラル 含有量・骨密度が低かったと報告されています。ただし、この実験では 盛り上がりの程度自体は餌の種類による統計的な差が無かったとされています [2]
- 紫外線・環境要因:不十分な紫外線(UVB)照射や温度・湿度の管理も、 代謝性骨疾患に関わる要因として報告されています[1]
ヘルマンリクガメとギリシャリクガメを対象に、エキゾチック専門病院を 受診した個体の記録を後ろ向きに調べた別の調査では、年齢のわりに体が重い こと自体は、飼料・成長に関連する病気と統計的な関連が見られなかったと されています。一方で、盛り上がりの重症度は年齢と負の相関があり(受診時に 若い個体ほど重症)、成長に関連する障害が寿命に影響しうる可能性が 示唆されていますが、論文自身が、この仮説の検証には対照研究が必要だと 述べています[4]。なお、論文自身が「年齢と体重の関係は 成長の速さを調べる指標として適切でなかったかもしれない」とも留保しており、 「体が重い=成長が速い」と単純に言い切れる調査ではありません[4]。
いずれも、1つの報告だけで原因を断定できるものではありません。
家庭でできること
診断や治療は家庭でできることではなく、必ず獣医師の判断が要ります。
そのうえで、一般的な健康管理として次のことが助けになる可能性があると 考えられています。
- 飼育している種にとって適切とされるカルシウム・リンの比率、
ビタミンD3の与え方を確認する(報告された研究で配合バランスとの
関連が指摘されています[3])
PR カルシウムパウダー:楽天Amazon - 紫外線(UVB)照射・温度・湿度など、飼育環境を適切に保つ
(報告された研究で環境要因との関連が指摘されています[1])
PR UVB(紫外線)ライト:楽天Amazon - 甲羅の触診による柔らかさの変化を、日頃から確認する(見た目の盛り上がり だけでは判断できないため[1])
これらはあくまで一般的な健康管理であり、すでに代謝性骨疾患のある個体を 治すものではありません。
受診の目安
今日中に受診を検討してください
- 甲羅や顎が明らかに柔らかい、押すとたわむ
- 食欲不振・元気消失を伴っている
- 手足に力が入らない、立ち上がれない様子がある
数日のうちに受診を検討してください
- 甲羅の盛り上がりが以前より進んでいるように見える
- 甲羅の柔らかさが気になるが、それ以外の様子は普段どおり
見た目の盛り上がりが軽くても、触診や画像検査でなければ分からない骨密度の 低下が起きていることがあります[1]。「見た目は軽いから大丈夫」と 自己判断せず、気になる変化があれば獣医師に相談することが勧められます。