要点
アカミミガメ(ミドリガメ)の首の付け根から耳のあたりにかけて、片側だけ盛り上がるように腫れているとき、近縁のミズガメで「耳部膿瘍(aural abscess)」と呼ばれる状態が報告されています[1]。
アカミミガメそのものを対象にした、症例数のまとまった調査は見つかっていません。ここで紹介するのは、同じヌマガメ科(Emydidae)に属する近縁種(ペインテッドタートル、ハコガメ)を対象にした海外の報告です[1][2][3]。
腫れがあっても一見元気に見えることがありますが、報告されている症例はいずれも慢性的な経過をたどっています[1]。腫れに気づいたら、自己判断で様子を見続けず、獣医師に相談することが勧められます。
どんな症状か
カナダ・オンタリオ州の野生動物病院に 2011〜2020 年に収容された、ペインテッドタートル(Chrysemys picta marginata)の記録を調べた報告では、次のことが述べられています[1]。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 収容されたペインテッドタートル(3,246 匹)のうち耳部膿瘍が見られた個体 | 26 匹(0.8%) |
| 幼体での発生 | 0 例(確認されたのはすべて成体) |
| 性別による差 | ほぼ同数(雌雄差なし) |
| 経過 | すべての症例で慢性化の所見あり |
| 耳部膿瘍のみを理由に収容された個体の転帰 | 治療後、すべて野生に戻された |
別の調査(米国バージニア州の野生動物病院、1991〜2000 年)では、収容された爬虫類 694 匹のうち、けが(74%)・原因不明(13%)に次いで、耳部膿瘍が 7% を占める第 3 位の原因として報告されています。ただしこの調査で対象となった 18 種のうち、耳部膿瘍が見られたのはハコガメだけでした[2]。
同じ「耳部膿瘍」でも、調査した地域・年代・種によって、報告されている頻度や見られた種にばらつきがあることが分かります。
考えられる原因
バージニア州の野生のハコガメを対象にした調査では、鼻水・目やになど上気道の症状を示す個体からマイコプラズマの一種が検出され、この病原体と耳部膿瘍との関連が調べられました。しかし、マイコプラズマが検出された 7 例のうち耳部膿瘍があったのは 5 例、無かったのは 2 例で、この調査では耳部膿瘍とマイコプラズマ感染との直接的な因果関係は証明されなかったと報告されています[3]。
このように、感染症との関連が調べられてはいるものの、確立した原因として報告されているものは、今回確認した文献の範囲では見つかりませんでした。断定できる原因が無いことは、飼い方が悪かったと決めつけられる根拠にはなりません。
家庭でできること
診断や治療は家庭でできることではなく、必ず獣医師の判断が要ります。
ハコガメの耳部膿瘍の治療のために運ばれた個体を対象にした報告では、治療にあたって全身麻酔をかけたことが記録されています[4]。腫れの中身を自己判断で潰したり、押し出そうとしたりしないでください。
そのうえで、清潔な水を保つこと、適切な温度を維持することは、ミズガメ全般の飼育で基本とされる一般的な健康管理です。ただし、これらが耳部膿瘍そのものを防ぐと確認した報告は、今回見つかりませんでした。
受診の目安
今日中に受診を検討してください
- 耳のあたりの腫れが急に大きくなっている
- 腫れの皮膚が破れて、出血や膿のようなものが出ている
- 腫れに伴って、急に元気や食欲が落ちている
数日のうちに受診を検討してください
- 耳のあたりに、片側だけ盛り上がったしこりがある
- しこりが数日以上、大きさを変えずに続いている
- 元気・食欲に目立った変化が無くても、しこり自体が消えない
しこりがあっても一見元気に見えることがありますが、報告されている症例はいずれも慢性的な経過をたどっています[1]。様子を見続けず、早めに相談することが勧められます。