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カメが片側に傾いて泳ぐ・うまく潜れない・浮いてしまう(浮力の異常)

カメが片側に傾いて泳ぐ、潜れずに浮いてしまうときは、文献で「浮力の異常(buoyancy disorder)」と 呼ばれる状態と重なることがあります。報告されている背景は、肺炎や肺の損傷、体腔内への空気の漏れ、 消化管の閉塞やガスのたまりなど複数に分かれます。ただし参照した報告はウミガメと動物園などの 飼育個体が中心で、ペットとして多いカメの飼育例を調べたものではありません。 報告されている症状・原因・受診の目安をまとめました。

文献 5 本更新

診断や治療を提供するものではありません。

ここに書いてあるのは、文献に報告されている内容の要約です。 実際の診断・治療は、必ず動物病院で受けてください。

要点

カメが片側に傾いて泳ぐ、潜れずに水面に浮いてしまう、うまく沈めない。

文献では、こうした状態は「浮力の異常(buoyancy disorder)」と呼ばれています。報告されている背景は、肺の病気(肺炎や肺の損傷)、体腔内に空気がたまる状態、消化管の閉塞やガスのたまりなど、複数に分かれます[1][2][3][4][5]。

参照した報告は、ウミガメと、動物園などで飼育されていたカワガメが中心です。 ミドリガメ(アカミミガメ)などペットとして多いカメを調べた報告は、今回の調べでは見つけられませんでした。ほかの種にそのまま当てはまるとは限りません。

呼吸器の病気(鼻水・口を開けての呼吸など)については、別の記事「カメ・リクガメの鼻から粘液が出る・口を開けて呼吸する」にまとめています。この記事は、浮力の異常に絞っています。

カメが片側に傾いて浮くイメージ図
イメージ図。実際の個体の見え方には個体差があります。甲羅の片側が持ち上がり、体が傾いている様子を示しています。

どんな症状か

ウミガメ(ロガーヘッド)14 頭の肺疾患の報告。 肺の病気の疑いで調べられた 14 頭のうち、8 頭に浮力の異常がありました。内訳は、左右対称が 4 頭、左右非対称が 4 頭(左側が上がる 3 頭、右側 1 頭)で、潜れない状態を含みます[1]。この 14 頭は、肺の異常の疑いがあって調べられた個体です。レントゲンでは 14 頭すべてに肺の異常のパターンが見られましたが、浮力の異常があったのは 8 頭で、浮力の異常がなくても肺に異常が見つかった例があったことになります[1]。

著者らは、ウミガメの呼吸器の病気は、呼吸困難・粘膜の青紫色化・鼻水・咳といった症状よりも、主に浮力の異常として現れると述べています。また、浮力の異常は、浮く側(positive)と沈む側(negative)に分けられ、positive buoyancy を得られないカメは息をするために水面に出るのが難しいと述べています[1]。

カワガメ(Dermatemys mawii)10 例の報告。 動物園などで飼育されていた 10 例で、浮力の異常が主な症状だったのは 9 例、食欲の低下は 2 例でした[2]。

ウミガメの腸の狭窄の報告。 腸や総排泄腔の狭窄で腸が詰まったアオウミガメ 6 頭で、ほとんどの個体に共通した異常として、浮力の異常(positive buoyancy)、元気消失、食欲低下、吐き戻しなどが挙げられています。著者らは、これらの異常は特異的なものではないと述べています(抄録による)[4]。

考えられる原因

文献で報告されている原因や関連する要因には、次のようなものがあります。

ただし、これらはウミガメと動物園などで飼育されたカワガメの報告で、 個々の飼育環境で何が原因かを、当サイトが特定することはできません。 診断は必ず獣医師の判断によります。

家庭でできること

診断や治療は家庭でできることではなく、必ず獣医師の判断が要ります。

カワガメの報告の著者らは、栄養と環境温度を含む適切な飼育条件が、小腸のガスとねじれの予防に重要と述べています(抄録による)[2]。

そのうえで、受診のときに伝えられるよう、次のことを控えておくと役立つ可能性があります。

  • いつから、どちら側に傾くか(左右どちらが上がるか)、潜れるかどうか
  • 食欲、うんちの様子(回数・量)、元気
  • 直前に餌を変えたか、与えすぎがなかったか、誤って飲み込んだ可能性のあるものがないか
  • 水温や飼育環境が、直前に変わったか
  • 同居している個体の様子

自己判断で市販の薬を使わず、早めに相談してください。

受診の目安

今日中に受診を検討してください

  • 浮いたまま潜れない、または傾いたまま姿勢が戻らない(食欲の有無にかかわらず。カワガメの報告では、亡くなった 5 例のすべてで、浮力の異常に気づいてから死亡または安楽死までが 1〜2 日でした。1 種の動物園飼育例の報告です[2])
  • 沈んだまま水面に上がれない様子がある(沈んだまま水面に出られないカメは息をするのが難しいと述べられています[1])
  • ぐったりして反応が鈍い
  • 口を開けて呼吸している、呼吸が荒い

数日のうちに受診を検討してください

  • 少し傾いて泳ぐ、浮きやすいなど、軽い変化が続いている
  • 食欲やうんちの様子がいつもと違う状態が数日以上続いている
  • 直前に餌を急に変えた、異物を飲み込んだかもしれない

浮力の異常は特定の病気に限られた症状ではなく、肺・体腔・消化管のどこが原因でも現れうると報告されています[1][4]。自己判断で様子を見続けず、早めに相談することが勧められます。

よくある質問

カメが片側に傾いて泳ぐのは、肺炎ですか

肺炎と決めることはできません。ウミガメの報告では、肺の病気が呼吸器の症状よりも 浮力の異常として現れることがあると述べられています。一方で、浮力の異常は 肺の病気のほか、神経の病気、体腔内の空気(pneumocoelom)、消化管のガスや異物からも 起こりうるとされています[1]。ロガーヘッド 14 頭の報告では、浮力の異常を示した 8 頭のうち 傾き(左右非対称)は 4 頭でした[1]。見た目から原因を判断することはできません。

浮いて潜れないのは、お腹のガスが原因ですか

原因の一つとして報告されています。動物園で飼育されていた中米のカワガメ (Dermatemys mawii)10 例では、小腸にガスがたまる状態(tympany)が疑われたか画像で確認され、 浮力の異常が主な症状だったのは 9 例でした[2]。ただし、ウミガメでは肺の病気[1]、 肺の損傷が疑われた体腔内の空気[3]、腸の狭窄[4]、異物の飲み込み[5]でも浮力の異常が 報告されています。ガスが原因かどうかを見た目で決めることはできません。

浮くだけで元気があれば、様子を見てもいいですか

カワガメ 10 例の報告では、亡くなった 5 例のすべてで、浮力の異常に気づいてから死亡または 安楽死までの経過が 1〜2 日と短かったとされています[2]。この報告は動物園のカワガメ 1 種に ついてで、他のカメにそのまま当てはまるとは限りません。様子見にせず、受診を検討してください。

根拠にした文献

  1. Ciccarelli S, Valastro C, Di Bello A, Paci S, Caprio F, Corrente ML, Trotta A, Franchini D. (2020). Diagnosis and Treatment of Pulmonary Disease in Sea Turtles (Caretta caretta). Animals (Basel), 10(8): 1355。DOI: 10.3390/ani10081355CC BY
  2. Gionfriddo TB, Georoff T, Baker K, Ialeggio D, Hinshaw K, Toddes B, Trupkiewicz JG. (2024). Intestinal tympany and volvulus in Central American river turtles (Dermatemys mawii). Journal of Zoo and Wildlife Medicine, 55(1): 224-234。DOI: 10.1638/2021-0109抄録のみ 抄録による記述です。
  3. Dittmer M, Barron H, Kellow L, Boylan SM, Hirsch SE, Perrault JR, Zirkelbach B, Norton TM. (2024). Autologous or allogenic blood pleurodesis as treatment for pneumocoelom in four sea turtles (Lepidochelys kempii, Caretta caretta). Journal of Zoo and Wildlife Medicine, 55(3): 801-809。DOI: 10.1638/2023-0097抄録のみ 抄録による記述です。
  4. Erlacher-Reid CD, Norton TM, Harms CA, Thompson R, Reese DJ, Walsh MT, Stamper MA. (2013). Intestinal and cloacal strictures in free-ranging and aquarium-maintained green sea turtles (Chelonia mydas). Journal of Zoo and Wildlife Medicine, 44(2): 408-429。DOI: 10.1638/2012-0071R.1抄録のみ 抄録による記述です。
  5. Stamper MA, Spicer CW, Neiffer DL, Mathews KS, Fleming GJ. (2009). Morbidity in a juvenile green sea turtle (Chelonia mydas) due to ocean-borne plastic. Journal of Zoo and Wildlife Medicine, 40(1): 196-198。DOI: 10.1638/2007-0101.1抄録のみ 抄録による記述です。

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